薬膳の基礎知識 [ 会員専用 ] 




津液に異常が生じると生成、輸布、排泄の間の均衡状態が失われます。津液の失調には、津液不足、水腫、痰飲の三つがあります。

 





津液の不足とは津液の量が大幅に減少し、全身や臓腑の滋潤と滋養作用が失調した病的な状態をいいます。




 津液不足の原因

生成不足:脾胃虚、飲食不節、久病(長期の疾病)、水分の制限などにより発生
津液の消耗過多:久病、高熱、嘔吐、大汗、下痢、多尿などにより津液を過度に消耗

 津液不足の症状とその分析

口渇、多飲、唇のひび割れ、のどの渇き、皮膚の乾燥・かゆみ・きめが粗い・艶がなくなる、毛髪の乾燥、目の乾燥、鼻の乾燥、空咳、喘息、喀血、不眠、便秘、乾燥便、尿少、重症では脱水症状、舌紅、少津、脈細数

<症状の分析>
生成不足や損傷により身体を潤す働きが悪くなり、乾燥の症状が現れる。
皮膚と毛髪が潤わない ➡ 皮膚の乾燥・かゆみ・きめが粗い、毛髪の乾燥
のどが潤わない ➡ のどの渇き
大腸と小腸の乾燥 ➡ 便秘、乾燥便、尿少

 津液不足の薬膳対策と中薬と食材

滋陰生津:陰を滋養し、津液を生じさせる。
滋陰生津の食薬

薬膳処方 食  薬 方  剤
滋陰生津 滋陰類
生津類
食材 豚肉、豚足、鴨肉、牡蠣、スッポン、ほたて、マテ貝、ムール貝、卵、牛乳、チーズ、小松菜、アスパラガス、トマト、きゅうり、いちご、銀耳、松の実、胡麻 五汁飲(ごじゅういん) 
梨汁・馬蹄汁・新鮮芦根汁・麦門汁・蓮根汁
中薬 百合、麦門冬、玉竹、沙参、玄参、黄精、女貞子、石斛、枸杞子、桑椹、黒胡麻

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水液が停滞し浮腫みが目立つ症状が現れます。症状により陽水と陰水に区別します。津液代謝の停滞は肺・脾・腎の機能失調により水液が皮膚に溢れる疾患です。眼瞼や顔面・四肢・腹部・背部のほか全身に浮腫がおこります。


 水腫<陽水>の原因

風邪の侵入あるいは湿邪の影響により、肺気の宣発粛降の機能が失調し、津液の分散ができなくなり突然に発病する浮腫みです。

 水腫<陽水>の症状とその分析

突然発病する、顔のむくみが眼瞼から始まり全身に急速に広がる、透明感のある皮膚のむくみ、尿少、のどの脹れと痛み、舌質紅、脈浮数、または悪寒、熱、肢体の痛み、全身のむくみ、だるい感じ、腹部の膨満感、食欲無し、吐き気、苔白膩、脈沈

<症状の分析>
風邪の侵入、あるいは湿邪の影響により肺気の宣発と粛降の機能が失調し、津液が分散されず、水道が通らなくなり引き起こされます。
湿邪の影響により脾の働きが低下することにより引き起こされます。

 水腫<陽水>の薬膳対策と中薬と食材

発汗利水清熱:発汗により排尿を促進し、熱をとり除きます。
発汗利水清熱の食薬

薬膳処方 食  薬 方  剤
発汗利水
清熱
 解表類
利水滲湿類
食材 セロリ、白菜、蒓菜、生姜、長葱、大葉、香菜、みょうが、冬瓜、なずな、金針菜、しじみ、鯉、茶葉 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)
麻黄・石膏・生姜・大棗・生甘草・白朮
中薬 葛根、麻黄、桂枝、防風、紫蘇、冬瓜皮、車前子、茵陳蒿、藿香




 水腫<陰水>の原因

慢性の疾患、慢性疲労などで引き起こされます。脾腎の陽気が不足し水湿の運化が低下することにより起こる水の停滞です。

 水腫<陰水>の症状とその分析

下半身のむくみ、尿少、顔色不華、疲れ、だるい、冷え、腹部の膨満感、食欲がない、下痢、舌質淡、舌体胖、苔白滑、脈沈遅

<症状の分析>
慢性の疾病、慢性疲労、房事過多などにより引き起こされます。
風邪の侵入あるいは湿邪の影響により脾の働きが低下することにより起こる水の停滞です。

 水腫<陰水>の薬膳対策と中薬と食材

温腎健脾・化湿利水:腎を温め、脾を健やかにすることにより津液の代謝をよくし、湿をとり除く
温腎健脾・化湿利水の食薬

薬膳処方 食  薬 方  剤
 温腎健脾
化湿利水
補気類
利水滲湿類
食材 粳米、はと麦、トウモロコシ、冬瓜、鯉、鮒、鱧、小豆、黒豆、大豆、空豆 実脾飲(じつひいん)
厚朴・白朮・木瓜・木香・草果・檳椰子・附子・白茯苓・乾姜各・炙甘草
中薬 山薬、扁豆、菖蒲、茯苓、葫芦、佩蘭、白豆蔲、玉米鬚、砂仁、沢瀉、防巳

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痰と飲は津液が代謝障害によって変質し生じた病的な物質であり、病気の原因になります。飲食からの水分と体内で生じた水分は、肺・脾・腎・三焦の各臓腑の機能により利用、循環、排泄されますが、これらの臓腑が機能失調すると、水の代謝が停滞し、水湿が形成され、寒・熱・気・火などの邪気の作用により痰飲が生じます。
痰は濃厚な水液(有形の痰飲)、飲は希薄な水液(無形の痰飲)をさし痰飲と合わせて呼びます。

分 類 ① 有形の痰飲: 見える、触ってわかる濃厚なもの、痰をいう。痰を吐く痰など。
② 無形の痰飲: 症状だけあり見えない希薄な水液、飲をいう。のぼせ、めまい、息が荒い、 吐くなどの症状が見られます。

痰・飲・水・湿は源が同じで、人体の津液の運行、輸送、運化機能の失調によってできた病理産物であり、病因です。陰邪、湿が溜まると水になり、水が溜まると飲(希薄)になり、飲が凝ると痰(粘々)になります。

 痰飲の原因

外感六淫、発汗障害、過労、飲食不摂生、ストレスなどが原因で、肺・脾・腎及び三焦などの臓腑機能が失調し、水液代謝に障害がでて水湿が体内で長く停滞して、痰飲が発生します。
飲は胃腸、肋骨、皮膚に溜まり、痰は気に従い昇降し動きます。病によって痰が生まれ、痰によって病が発症します。

 痰飲の特徴

痰飲は、滞る場所により、複雑な症状が現れます。主に気の昇降出入に影響し、さまざまな病症を引き起こします。
気血の流れの障害になる:気血の流れを阻滞し、臓腑機能を障害する。
また、気機の昇降を阻止し、臓腑の気機の昇降が失調する。
水液代謝に悪影響する:水液代謝異常により生じた痰飲は、肺・脾・腎の水液代謝機能に影響し、水液代謝をさらに悪化させる
心の紳志を主る機能を乱す:痰飲が心竅を塞ぐと意識や精神活動に悪影響を及ぼす。
症状が複雑、変化に富む:痰飲が気血の流れにより五臓六腑、四肢百骸、皮膚筋肉に運ばれ、停滞すると、多くの原因不明の症状を引き起こします。「怪病多痰」といわれています。




 痰飲<痰証>の特徴

六淫邪気、七情の損傷により肺・脾・腎機能が失調し引き起こされます。

 痰飲<痰証>の症状とその分析

<停滞部位と症状その分析>
停留部位 症  状 分  析
頭部 頭痛・めまい・混迷  脾気の清陽不昇による頭への営養不足
咳嗽、痰多、喘息 肺の宣発と粛降の失調
胸悶、意識不明、癲癇、心悸 心経に詰まる。心竅を塞ぐ
脾・胃 脘腹脹満、嘔吐、吐き気、食少 胃気上逆(下降で正常)
経絡
咽喉
皮膚
肢体麻痺、半身不随
異物感、詰まり感、(梅核気)
瘰癧、痰核、腫塊
経絡気血の運行不暢による肢体・筋肉の滋養不足
局部の気血の運行不暢
局部の気血の運行不暢
※瘰(小さい塊)癧(大きな塊)塊が連結状態で固く動く  
 痰核・触ると動く固まり梅核気・咽喉部に梅の核(種)のような異物で塞いでいる感じの症状 腫塊・はれもの



 痰飲<飲証>の原因

臓腑機能の障害あるいは衰退により、水液代謝の障害が起こり、水が停滞し臓腑・組織の間に滞るために引き起こされます。水の停滞する部位によって「痰飲」、「懸飲」、「溢飲」、「支飲」の四つに分類されます。

 痰飲<飲証>の症状とその分析

<部位と症状その分析>
部  位 症  状 分  析

(胸膈・胃)
咳嗽、痰多清稀、喘息、仰向けになれない、顔面浮腫、苔白賦、脈弦緊 停留した水が肺を犯し肺の呼吸機能の影響
支 飲
胃腸 脘腹脹満疼痛、嘔吐清水、吐き気、食少、腸鳴、眩暈、心悸、苔白滑、脈弦滑 胃腸に水がたまり伝送機能を阻滞する
水が上に昇り心・肺を犯す     
水湿内停・痰飲の脈象
痰 飲
胸脇 胸脇疼痛、脇間部脹満、心悸、喘息、脈沈弦、気短 停留した水が胸脇を犯す       懸 飲
皮膚・四肢 下肢水腫(四肢水腫)、体が重い、咳喘、多量の痰、発熱、悪寒、無汗、尿少 水が肺・脾・腎の働きを阻滞し四肢・皮膚に溢れる            嗌 飲

 痰飲<飲証>の薬膳対策と中薬と食材

祛湿化痰:湿をとり除き痰飲を解消する。
温性・苦味・淡味の食薬を用いて、津液の代謝を改善します。
袪湿化痰の食薬

薬膳処方 食  薬 方  剤
祛湿化痰 食 材 はと麦、へちま、冬瓜、セリ、里芋、海苔、昆布、海藻類、くらげ、みかん、ゆず、オレンジ 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう) 
茯苓・桂枝・白朮・炙甘草
中 薬 桔梗、杏仁、蘇子、白芥子、菜菔子、瓜蔞、貝母、茯苓、白朮、炙甘草、車前子、冬瓜子

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