薬膳の基礎知識 [ 会員専用 ] 




薬膳は健康を意識した食事であるといえます。その食事内容は、大きく分けて「健康に必要な成分を補う食事」、「健康を害している原因を取り除く食事」、「陰陽のバランスを考えた食事」の三つが上げられます。そのためには、現代栄養学の栄養素の考え方ではなく、薬膳の食物の効能についての新しい知識を理解して上手に適応させる必要があります。食物の効能には、主に「性」「味」「帰経」「補瀉」「昇降浮沈」などがあります。


 五性(五気)

食物には寒・涼・温・熱などの異なる性質または気質があることを指し、「四性」あるいは「四気」といいます。平性を含め「五性」ともいわれます。

寒性・涼性:身体の熱を取る性質、鎮静、解毒、消炎作用がある食材です。
      夏の薬膳、熱性体質などの食事に使用します。

熱性・温性:身体を温める性質、止痛、新陳代謝の促進作用がある食材です。
      冬の薬膳、冷え症体質などの食事に使用します。

平 性  :寒涼性、温熱性のどちらの作用もない、極めて穏やかな性質の食材で、
      日常の食事で一番多く、使用されます。

五性の食材・中薬表
寒 性 涼 性 平 性 温 性 熱 性
緑豆、アロエ、
苦瓜、すいか、
菊花、梨、柿、
かに、昆布、
わかめ、馬歯莧、
金銀花 
そば、豆腐、
胡瓜、セロリ、
大根、レタス、
茄子、緑茶、
百合、薄荷、
麦門冬
粳米、大豆、人参、きゃべつ、椎茸、
いか、豚肉、卵、
牛乳、蓮の実、
麦芽
もち米、山芋、
胡桃、栗 葱、
にら、海老、鶏肉、牛肉、黒砂糖、
朝鮮人参、紅花、みかん  
胡椒、唐辛子、
肉桂、山椒、
乾姜


 食物の「五味」

食物には酸・苦・甘・辛・鹹などの異なる五種類の食味があり「五味」といいます。この他に淡味があり「六味」ともいわれます。実際の味だけでなく使用して現れる効果も含まれています。

酸 味 : 酸味の食材は肝に作用し肝を養います。収斂・固渋作用があり、体内から の過剰な発散を防ぎ、筋肉を引き締める作用があり、寝汗、下痢、頻尿、慢性の咳を止めるなどに効能があります。

苦 味 : 苦味の食材は心に作用し心を養います。清熱・解毒・消炎・鎮静・利尿・通便・燥湿の作用があり、発熱、ニキビ、食欲不振などに効果があります。

甘 味 : 甘味の食材は脾に作用し脾を養います。滋養作用・緊張を緩和し痛みを取るなどの作用があり、慢性疲労、虚弱、疼痛などに効果があります。

辛 味 : 辛味の食材は肺に作用し肺を養います。体を温め、気血の循環をよくし、滞っているものを発散させるなどの作用があり、かぜ、冷え、瘀血、疼痛などに効果があります。

鹹 味 : 鹹味の食材は腎に作用し腎を養います。化痰・固いものを和らげ塊を解消し通便などの作用があり、血虚、便秘、腫塊などに効果があります。

五味の食材・中薬表
酸 味 苦 味 甘 味 辛 味 鹹 味
杏、梅、酢、ざくろ、五味子、山楂子 苦瓜、チシャ、アロエ、菊花、緑茶、銀杏 穀類、果物、 蜂蜜、砂糖、南瓜、なつめ 生姜、ねぎ、にんにく、胡椒、唐辛子 昆布、のり、わかめ、海藻、塩、海老


 昇降浮沈

昇・降・浮・沈は食材と中薬の作用方向を指すものです。

昇・浮 :上昇・発散を意味します。辛・甘の味や温熱性のもの、花や葉のようなものは昇・浮の傾向が
     あります。

降・沈 :下降・泄利の意味です。酸(渋)・苦・鹹の味や寒涼性のもの、茎・根・実・石・貝類のような
     重いものは、降・沈の傾向があります。

四気五味と作用方向の関係
四気 五味 種類 作用方向 作用(効能) 意味
温・熱 辛・甘 花・葉 昇・浮 陽気を上昇させる・
祛風散寒・湧吐・開竅
上昇・発散
寒・涼 酸(渋)・
苦・鹹
茎・根・実・石・貝 降・沈 清熱・止咳・安定・健胃・利尿・瀉下 下降・泄利


 食物の「帰経」

帰経とは、食材や中薬が体のどの臓器組織に選択的に作用するかを示したものです。 色や性味によって入る臓腑も違ってきます。

肝 経 肝臓・目・筋・子宮・爪・自律神経などに関連し、これらの臓器組織に作用します。肝経には酸味、青色(緑)の食材が働きかけます。
心 経 心臓・血液循環・脳の意識活動・舌・顔面などに関連し、これらの臓器組織 に作用します。心経には苦味、赤色の食材が働きかけます。
脾 経 胃腸・水分代謝・筋肉・味覚・免疫・止血などに関連し、これらの臓器組織に作用します。脾経には甘味、黄色の食材が働きかけます。
肺 経 肺臓・皮膚・鼻・免疫機能・大腸などに関連し、これらの臓器組織に作用し ます。肺経には辛味、白色の食材が働きかけます。
腎 経 泌尿器・内分泌・脳・骨髄・耳・髪などに関連し、これらの臓器組織に作用します。腎経には鹹味、黒色の食材が働きかけます。


 食物の「補性」と「瀉性」

食材と中薬には、補・瀉の性質があり、人体にとって必要なものが不足すれば補い、反対に不必要なものは体内から瀉す、排出するという作用があります。

1. 補 性
体質の「虚」に対応し、人体の生理機能の衰退や不足を補う作用があります。気・血・陰(津液)・陽は人体を構成し、生命活動を維持する基礎物質ですので、不足すれば各臓腑組織の機能低下が起こり、体調不良や病気が発生します。気虚には補気、陽虚には補陽、血虚には補血、陰虚には補陰というようにそれぞれに適応する食材や中薬を使用します。

補性の種類と適応する食材・中薬表
種 類 効 能 食材・中薬
補 気  臓腑機能を促進し、体力を増強  山芋、南瓜、鶏肉、蜂蜜、黄耆
補 陽  内分泌機能、エネルギー代謝の促進  胡桃、海老、にら、羊肉、肉桂
補 血  栄養を与え、造血機能を促進  黒豆、人参、レバー類、棗、当帰
補 陰  血・体液・精を補う、栄養の補給  鶏卵、貝柱、豚肉、百合、枸杞子


2. 瀉 性
「実(邪気)」の状態に対応し、「瀉」は実を取り除く作用をいいます。邪気の侵入や臓腑機能の失調による発熱、頭痛、咳、痰などの症状に、それぞれ適応した瀉性の食材や中薬を使用します。

瀉性の種類と適応する食材・中薬表
種 類 効 能 食材・中薬
解 表  発熱、頭痛、風邪に発汗、解熱作用  薄荷・菊花・葱白・生姜
清 熱  発熱、口内炎、炎症に解熱、抗化膿作用  緑豆・苦瓜・西瓜・茶葉
化 痰  痰の消除作用で咳止めに痰湿体質の改善  昆布・海藻・梨・里芋
消 食  消化を促進、消化不良、食欲不振を改善  大根・蕪・山査子・麦芽